55周年を迎えて
昭和40年。当時の繁華街「仲見世」に、初代・桃井清。
女将・英子の二人が立ち上げた「桃の井」。
当時30歳だった清は「どうしたらお客様に喜んでいただけるか」を料理を通じて考え、当時20歳の英子は接客を通じて考えていました。まだ「飲食店で刺身」という概念がなかった当時の福島。「今日はこれが入ったよ」「これ美味しいから食べてみませんか?」と、少しずつ少しずつお客様の嗜好を増やしていったと聞いています。
昭和の高度成長期。その後に来たオイルショック。日本経済の乱高下の中、お世辞にも綺麗とは言えない仲見世という立地で、無我夢中で仕事をし、おかげさまでお客様にもスタッフにも恵まれ繁盛させていました。仲見世で商売を始めた7年目の頃、店主である清は「ここで長く営業するのは違う」と移転を考えていました。
移転を考え始めてから10年。1度目の移転。開業から17年の月日が経っていました。
平成元年。息子である私が東京人形町にある「濱田家」様に出ます。大きな人生の節目でした。料理のいろはを濱田家様での6年間で学ばせていただき、その後、麹町・西葛西・巣鴨での仕事を経て、8年間の修業を終えて福島に戻りました。「親孝行をしたい」そんな気持ちを持ち続けてた私の夢でもある「親子での仕事」が始まります。暗く長いバブル崩壊の後遺症の中。お借りしていた店舗が老築化のために立て直す必要があると言われ、隣に二度目の新築移転を決意。時代は平成になっていました。
先代から代表取締役を受け継いだのが2010年10月。その半年後に東日本大震災が起こります。正直「俺はこれで店をつぶすのか」と思いましたが、避難者に寄り添えた6年間の炊き出しを続けていく中で知り合えた、仲間たちとお客様に支えられ今日を迎えることが出来ています。
「こちら側の都合で仕事はしない」「お客様の嗜好に寄り添う努力を最後までする」
初代店主の清が掲げた「誠実一路」の精神は私を含めスタッフ全員に受け継がれています。